胆道・膵臓の疾患

 胆膵疾患に関しても、他のグループ同様に内科医・外科医が一緒のチームを組み、 患者さんにとってベストと考えられる治療を提供していきます。


図1 胆道、膵臓、十二指腸と周囲臓器

 胆道は、肝臓でつくられた胆汁が十二指腸に排出されるまでのすべての経路を指します。胆汁は肝細胞で生成される消化液で脂肪の消化吸収を助ける作用を持ちます。
 膵臓は、胃の後ろに位置し、長さ約15cm・厚さ約3cmの大きさです。膵臓はアミラーゼ、トリプシン等の消化酵素を十二指腸へ分泌する外分泌作用とインスリンやグルカゴン等のホルモンを血中へ分泌する内分泌作用を持ちます (図1)。
以下、代表的な疾患をご説明します。

1)急性胆嚢炎・胆嚢結石
 もっとも、患者さんの多い病気です。
 腹痛や発熱などの症状のある胆嚢結石症(胆石症)は手術が治療になります。胆石による痛みの発作は1回生じると何度も繰り返すことが多い症状で、炎症が強いと胆嚢が腫れあがったり、周りの組織に癒着が起こったりすることもあります。
 胆石により急性胆嚢炎を発症してしまった場合には、より早期の手術を行う方が良いとされています。当センターでは、急性胆嚢炎の診断後、迅速に、身体にやさしい腹腔鏡下胆嚢摘出手術を行うことで、入院期間を短縮する努力をしています。
胆石症外来
胆嚢の代表的疾患である胆石症は、胆石発作などでおなかが痛くなるだけではなく、結石が総胆管に落下し嵌頓してしまい、黄疸や胆管炎または膵炎を起こすこともあります。そのため、手術だけでは治療が完結できない場合も少なくありません。胆管炎や膵炎を併発している場合は、内視鏡的な治療を先行する必要があり、また、急性胆嚢炎の状態の場合は、可能な限り、外科的治療を早い時期に行った方が良い結果が得られていることも知られています。当センターでは、内科外科統合したひとつのグループで診療しているため、こういった疾患を最も得意としております。外科治療と内科的治療で最善と考えられる方法を選択し、スピーディーに治療を行います。胆石症に関するご相談は、月曜日午前中の胆石外来にご紹介下さい。また、ご都合の合わない場合は、適宜ご相談に応じます。
【腹腔鏡下胆嚢摘出術について】
 当センターでは、手術前日に入院し、翌日に手術を行います。手術の翌日には、食事がはじまり、シャワーも許可されます。腹腔鏡手術の場合、からだの回復が早く、予定手術の場合は、術後3日目に退院としています。
 また、傷あとができるだけ残らないように、傷を少なくしたり(おへそのみを切開する方法;単孔式手術)、傷を小さくしたり(特別に細く加工した道具を用いる方法;Reduced port surgery)、患者さんの痛みや整容性の苦痛を少なくする工夫も行っています。
 当センターでは、月曜午前中に胆石外来を受け付けています。

2)急性胆管炎・胆管結石
 急性胆管炎は、悪化すると血液中に細菌が入り込んだり(敗血症)、膵炎を起こしたりするため、重篤な状態になることがあります。そのため当センターでは、急性胆管炎に対しても、受診後、早期に治療(内視鏡的胆道ドレナージ術)を行っております。胆管結石が原因の場合は、炎症が落ち着いた後に砕石術を施行します。
 多発結石や巨大結石に対しては内視鏡的十二指腸乳頭ラージバルーン拡張術 (図2)も行っております。
 また、どうしても内視鏡的に結石を摘出できない場合は、腹腔鏡手術により、胆嚢摘出の際に、総胆管結石を摘出しています。
 この病気は、胆嚢結石が原因であることが多いため、内視鏡の治療のあと、最終的に胆嚢摘出術が必要になることが多くあります。このような場合も、当センターでは、内科医と外科医が合同でチームを形成しているので、内科的治療から外科的治療まで、一連の流れでスムーズに治療を行います。
図2 多発総胆管結石に対する内視鏡的十二指腸乳頭ラージバルーン拡張術

3)胆道がん(胆嚢がん、胆管がん、乳頭部がん)
 悪性の病気が疑われた場合には、画像検査(腹部超音波検査・CT・MRI・内視鏡検査等)により診断を行います。診断確定後は、手術での切除が可能な場合は迅速に手術を行います。すぐに切除することが難しい場合には、腫瘍内科と連携し化学療法を行っていきます。また、胆道がんによる胆管狭窄に対しては、内視鏡でステント(金属・プラスチック。図3)を留置し、胆管炎や黄疸を予防します。
図3 胆道がんによる胆管狭窄に対する胆管金属ステント

4)膵臓がん
 各種画像検査で診断を行います。必要に応じて、超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)も施行しております(図4)。
図4 膵腫瘍に対する超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)。

 診断確定後は、胆道がんと同様に、手術での切除が可能な場合は迅速に手術を計画します。膵がんは難治性のがんであり、切除後も高頻度に再発を来たし、長期生存が難しいため、生存期間を延ばすためいくつかの臨床試験が行われているます。当センターでは、多施設共同研究に参加しており※、病状によっては、最新の治験を行うこともあります。一方、切除することが難しい場合には、腫瘍内科と連携し、化学療法をはじめとする治療を行います。
 また、膵臓腫瘍の部位や悪性度によっては、より低侵襲な手術である、腹腔鏡下での手術も施行しております。
※ Prep-02/JSAP-05 膵がん術前治療研究会