私達は咽頭食道憩室症(Zenker憩室)に対する最新治療として「経口内視鏡的憩室中隔筋層切開術 Zenker’s diverticulum per-oral endoscopy myotomy: Z-POEM」を行っております。この治療法は、外科治療ではない内視鏡による低侵襲治療であり、高い安全性と、高い治療効果を有しており、本邦ではわれわれのところのみでおこなわれています(2021年9月現在)。
咽頭食道憩室(主にZenker憩室)は、食道の蠕動運動の異常によって食道内圧が高まり、粘膜が押し出されて食道外にふくらんだものです。食事のつかえ感や食事の停滞による口臭の原因となることがあります。詳しく検査しないと発見されない場合もありますので、同症状でお困りの方は一度ご相談いただければと思います。
A:咽頭部の内視鏡画像です。11時方向に憩室があり食べ物が詰まっています。
B:CT画像 矢印の部分に憩室を認めます。
C:食道透視検査の画像です。憩室内にバリウムが停滞しています。
引用 Shimamura Y, et al. Per-oral endoscopic myotomy as treatment for Killian–Jamieson diverticulum. DEN OPEN. 2021
咽頭食道憩室(Zenker憩室)の治療法としては外科的治療(手術)が選択されることが多いです。頸部に皮膚切開をおいた外科手術が主流でした。患者さんの負担が大きく、合併症の増加などが懸念されました。そこで患者さんの負担を減らす工夫として、胃カメラのみで行う経口内視鏡的憩室中隔筋層切開術 (Per-oral endoscopic myotomy for Zenker diverticulum: Z-POEM) が開発されました。
胃カメラを用いて、頸部食道粘膜を切開し粘膜下層トンネルを作成して憩室中隔まで内視鏡を進めます。次に中隔筋層を全切開することより憩室中隔を切除します。最後にクリップを用いて粘膜閉鎖して終了となります(下図)。この方法は、食道アカラシアに対する経口内視鏡的食道筋層切開術(Per-Oral Endoscopic Myotomy: POEM)を応用した治療法です。POEMは現在、その有効性と安全性が広く証明され、2014年には保険診療となったきわめて安全な治療法です。
Z-POEMの開発によって、体表に傷をつけずに咽頭食道憩室隔壁の筋層切開が可能となり、低侵襲治療であるため身体への負担を軽減することができます。なお、この手術は現在保険診療ではなく、自費診療ですが、患者さんの負担をできるだけ少なくする配慮をおこなっています。詳細は担当医にご相談ください。
引用 Shimamura Y, et al. Per-oral endoscopic myotomy as treatment for Killian–Jamieson diverticulum. DEN OPEN. 2021
つかえ感を主訴に受診され咽頭食道憩室が発見された患者様です。当院でZ-POEMを施行いたしました。下図はバリウム検査ですが左の術前あったバリウムの停滞が右図(2か月後)では解消されスムーズに通過するようになりました。つかえ感も消失し経過順調です。
実際検査をしてみないとわからない病気もたくさんありますので、なにか食事に関するお悩みがございましたら一度ご相談いただければと思います。
引用 Shimamura Y, et al. Per-oral endoscopic myotomy as treatment for Killian–Jamieson diverticulum. DEN OPEN. 2021
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