1)食道アカラシアとはどういう病気?
食物を口から胃までスムーズに送るには、「食道の口から胃へ送り出す滑らかな蠕動運動」と「食道の出口(食道と胃のつなぎめ)が開くこと(弛緩)」が必要になります。これらに異常を来したものを食道アカラシアといいます。食物のつかえ感、食物の逆流、体重減少などの症状をおこします。胸痛をおこすこともあります。これらの症状のいずれかがある場合は、食道アカラシアの可能性があります。
2)食道アカラシアのどうやって診断するの?
食道アカラシアは、診断をつけることが難しい場合があります。当院で初めて診断がつき治療を受けた患者さんが多くいます。食道アカラシアの診断には下記検査が必要です。
① 内視鏡検査(胃カメラ)
② 食道バリウム検査
③ 食道内圧検査(食道の蠕動運動をみる検査)
④ CT検査
当院では、これらの検査および診断と、それに応じた治療方針・日程の決定までを1泊2日の入院で行っておりますので遠方の方も余裕をもって検査を受けることができます。
3)食道アカラシアの治療法には何があるの?
① 内服治療
② 内視鏡を用いたバルーン拡張
③ 内視鏡による筋層切開術(Per Oral Endoscopic Myotomy:POEM)
④ 外科手術による筋層切開術
があります。①と②は効果が不十分もしくは長期的な効果が乏しいといわれています。③と④の筋層切開術は治療効果が高いといわれておりますが、まずは内視鏡治療POEM が食道アカラシアの標準治療となっています。
筋層切開術を体に傷をつけずに内視鏡だけで行う方法で、当センターの井上晴洋教授が世界に先駆けて開発した方法です。この治療法は我々が2008年9月に世界で初めて行って以来、国内外でその安全性、根治性、低侵襲性が認められ、現在では世界に広く普及しておりスタンダードな治療法です。
① 体表に傷がつかない
② 筋層を切る長さや方向を自由に調整できる(つまり個人個人に応じたオーダーメイド治療が可能)
③ 体への負担が少ない
④ あらゆるタイプのアカラシアや類似疾患に対応が可能
というメリットがあります。
一方で、POEMでは術後の胃酸逆流症状を懸念する声もありますが、当院においては、POEM後の逆流のリスクが高いと思われる患者さんには内視鏡的に逆流防止手術を加えることができます(臨床研究)われわれは、現在までに2,000例以上(令和2年4月現在)のPOEMを行っており、世界屈指の症例数の施設となっています。
① 胃カメラで食道を観察し、患者さん各々に必要な筋層切開の長さを決めます。
② 食道粘膜の下に水を入れて表層粘膜を浮き上がらせ、胃カメラが入るだけの穴を表面を開けます。胃カメラを粘膜の下(粘膜下層)に入れて、トンネルを胃側に作っていきます。(粘膜下トンネル作成)
③ トンネルを作成した後に筋層を切開していきます。筋層切開終了後に抗生剤をトンネル内にまいて、表面につくった入り口をクリップで閉鎖して終了します。なお、クリップは通常1か月ほどで自然に外れます(便と一緒に知らないうちに排出されます)
術前検査
● 血液検査
● 胸部・腹部レントゲン検査
● 胸腹部(造影)CT検査
● 上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)
食道の状態および胃から十二指腸に病気がないかの確認を行います。
● 食道内圧検査
食道の圧を測定するため鼻から細いチューブを入れ、食道の内圧を測定することにより食道の運動障害の評価をします。水を飲んでいただく必要があるので、のど麻酔はこの段階で行いませんが、静脈麻酔(眠り薬)および鼻の麻酔を行います。
● 食道透視検査(食道造影検査)
のど麻酔と点滴からの麻酔の効果が切れた後に1階の透視室にてバリウム検査を行います。食道の拡張度および他の臓器と食道の関係、また他に大きな病気がないかの確認を行います。
● 呼吸機能検査
全身麻酔及び内視鏡手術が安全に行えるように肺活量を検査します。
※「食道内圧検査→上部消化管内視鏡検査→食道透視検査」はセットで行います。
※ その他の検査は入院の上での検査であれば入院中に行います。
※ 患者さんのご都合に合わせて外来での検査も可能です。担当医師とご確認ください。
手術前日
通常は治療前日に入院し、入院後は流動食を食べていただき手術時になるべく食道に食べ物の残りがないようにします。
手術当日
朝から絶食とし、点滴を行い手術室から呼ばれるまで病室で待機します。
手術後当日
予想される症状としては38℃程度の発熱、胸痛(筋層を切ったことによる)、のどの違和感が挙げられます。手術翌日には解熱し、痛みもかなり減ってきます。発熱や強い痛みがある場合には解熱・鎮痛剤などにより対応していきます。
手術翌日(飲水開始)
① 胃カメラにてクリップで閉じたところの確認をします。
② 食道透視検査を行い、合併症の有無を確認します。
これらが問題なければ飲水を開始します。
手術2日目(食事開始)
重湯から食事を開始し、問題なく経過すれば食事開始3-4日で通常の食事となり、退院となります(術後4日目がまずは退院目標となります)
退院後の注意点
退院後1週間は入浴や激しい運動、アルコールや刺激物の摂取は避けていただきます。退院後も胸痛が続く方がいますが、日が経つにつれてよくなっていきます。食事の通過がよければ特に食事内容に気を付けることはありません。
その後の予定
治療2か月後および1年後に外来にきていただき、治療後状態を確認します。同日、食道内圧検査、胃カメラ、食道造影検査を行います。
※ 混み具合によりすべての検査が終わるまでに数時間かかる可能性があります。
黄色矢印のところが開いています。
治療後には食道も細くなっており、バリウムの流れもよくなっています。
何かご不明な点がありましたら、いつでも担当医師にご確認ください。
患者のみなさまへ
昭和大学
江東豊洲病院 消化器センター
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