この度、第103回消化器内視鏡学会総会(2022513日~15)が京都で開催されました。コロナ禍のハイブリッド開催でしたが、会場の京都国際会議場はとても広く、入念な感染症対策のもとで安心して現地に臨むことができました。7-8割の発表者が現地に来場しており、あちらこちらでface to faceでの再会を楽しむ姿がみられました。当院からは8名が演題発表を行い(主題演題7、一般演題1)うち7名が現地参加いたしました。会場での質疑応答に加えオンラインでの質問も多く寄せられており、従来型の学会の良さとvisual meetingが上手く融合して活発な討議が行われていました。若手の医局員にとっては初めての総会、現地発表でありましたが現場の良い緊張感と他の施設の内視鏡医との交流を経験でき、良い機会となったようです。京都という開催場所も手伝い、対面での学会の素晴らしさも再認識できた会でした。 

尚、本会で井上晴洋教授・センター長は消化器内視鏡学会理事長の任期を終えられました。最終理事長講演ではこの3年間を振り返られ、井上先生が在任中に取り組まれてきた新規事業や臨床研究の発展についてご講演されました。コロナ禍の中、DEN Open創設をはじめとした多くの功績を残され、かつ臨床では同時進行でSubmucosal endoscopyから全層切除への世界を広げ、パワフルにご活動されてこられました。“医療は常に過渡期”。引き続き井上先生と共に、私達も臨床・研究ともに歩みをとどめることなく、精力的に活動して参りたいと思います。

以下本学会での受賞・発表者一覧(+コメント)です。

受賞

DEN Best Reviewers Award 2021

島村勇人先生

受賞コメント

大変光栄なことに学会機関英文誌でありますDigestive Endoscopy誌(Impact factor: 7.559)の優秀査読者賞(Best Reviewers Award 2021)に選出いただきました。投稿された論文を査読することにより論文の質を担保する役割を担うことができ、また、新しい知見を客観的に批判的吟味しながら日々勉強させていただいております。論文執筆はもちろんのこと、査読によっても微力ながら医学・医療の進歩に貢献できればと考えております。今後も質の高い査読を頑張ってまいります。

 

演題発表

(主題演題)

発表者:鬼丸学 先生

★ワークショップ12  消化管腫瘍に対する術中内視鏡と腹腔鏡を融合した治療戦略

演題名:当院における上部消化管粘膜下腫瘍に対する内視鏡・腹腔鏡を用いた低侵襲治療の開発と治療戦略

コメント:

内視鏡治療が大きく進歩し、一方で腹腔鏡手術やロボット手術など外科手術の低侵襲化が進んだことで、以前まで隔たりの大きかった両者の治療が近年急速に接近し融合しています。両者の治療をうまく応用することで各々の治療の利点を最大に利用し、また欠点を補い合うことができ、新しい低侵襲治療の開発が急速に進んでいます。本発表では、当院が開発した経口内視鏡的腫瘍摘出術(POET)、非開放型の腹腔鏡内視鏡合手術(LECS)であるCLEAN-NETを中心に、内視鏡・腹腔鏡を用いた低侵襲治療について、我々の経験と治療戦略について報告いたしました。この分野は、ここ数年消化器治療の分野で注目度が高く、内科系・外科系混合での診療している当センターの特長・強みが生かされる分野であり、今後も当院発の技術を発信し続けたいと思います。

 

発表者:島村勇人 先生

★シンポジウム2 機能性上部消化管疾患の診断と治療

演題名:機能内視鏡検査法Endoscopic pressure study integrated system (EPSIS)と総逆流回数のとの相関について

コメント:

内視鏡検査中に胃の内圧を測定することで胃食道逆流症(gastroesophageal reflux diseaseGERD)の診断を行う新規内視鏡機器、内視鏡的内圧測定統合システム (Endoscopic pressure study integrated systemEPSIS)の有用性について報告しました。いままで内視鏡的に下部食道括約筋(胃と食道をつなぐ部分)の機能を評価できるということを発表しましたが、今回は24時間pHモニタリング検査で得られる「総逆流回数」というパラメーターとの関連を実証した内容です。今後もさまざまな角度でEPSISの有用性を追加検討し、臨床現場で活用できる機器として開発を進めてまいります。

 

発表者:田邊万葉 先生

★シンポジウム6   –内視鏡診療における鎮静に関するガイドラインを検証する

演題名:大腸内視鏡検査におけるプロポフォール鎮静法 管理のポイント

コメント:当院の内視鏡診療では当たり前となっているプロポフォールですが、保険適応外ということもあり未だ日本国内でルーチン使用している施設は少ないのが現状です。今回は当院での大腸内視鏡検査2万件のデータから、プロポフォール鎮静中の看護師記録をもとに、鎮静中に起こったイベントやその迅速対応の現状について発表させて頂きました。高齢者、BMI高値、検査時間が長いほど、有意に循環呼吸状態の変化が発生していましたが、監視者の迅速評価・対応により重篤な偶発症はなく安全に使用できているという結果でした。今回2万件という膨大なデータを抽出し解析の指導をしてくださった浦上先生に感謝申し上げます。今後引き続き、「安全で快適」な大腸内視鏡検査のためフィードバックを行い、研鑽を積んでまいりたいと思います。

 

発表者:加藤久貴 先生

★パネルディスカッション3 大腸内視鏡診療トレーニングにおける課題と工夫

演題名:大腸内視鏡検査における自己研鑽の指標としての経時的Adenoma detection rateの活用

コメント:ADRを評価しフィードバックすることが、共通のQIとしてトレイニーだけでなくスタッフ間においてもよい意識づけ、自己技能の客観視をする一つの指標となり、組織全体としての大腸内視鏡技術の底上げ・教育ツールとして有用であると発表させていただきました。発表を通じて自己のADR含めた検査傾向の振り返りもさせていただき、よい刺激・モチベーションとなりました。このような機会を頂き誠にありがとうございました。

 

発表者:福田舞 先生

★パネルディスカッション9  –大腸内視鏡スクリーニングにおける工夫と課題

演題名:当院でのAdenoma detection rateの算出・活用法と課題 

コメント:便潜血陽性者で各内視鏡医個人のADRを算出し、施設・検者間格差の無い共通のQIとして活用できると考えました。そして定期的にADRを算出し、内視鏡医のパフォーマンスを比較・評価し、質のよい検査を行う意識づけが大事です。今回ハイブリッド形式での開催で、初めての主題演題で緊張しながらも無事に現地発表を行うことができました。指導医の先生方に感謝するとともに、他施設の発表・質問を聞き、いかに他の施設も見逃しを防ぐかの工夫をしていて興味深く、取り入れようと思いました。

 

発表者:西川洋平 先生

★ワークショップ13 -2cm未満の胃粘膜下腫瘍に対する診断、治療戦略

演題名:当院における2cm未満の胃粘膜下腫瘍に対する診断・治療戦略

コメント:当院における2cm未満の小さな胃粘膜下腫瘍(SMT)に対する検査から治療までの取り組みを発表させていただきました。新たなデバイスや治療法の開発に伴い、現在SMTは注目の分野であり非常に勉強になりました。私達のセンターでも井上教授を中心に、外科手術と同等で低侵襲な内視鏡単独での治療に積極的に取り組んでおります。引き続き、日々の診療と研究に精進していきたいと考えております。

 

発表者:田中仁 先生

★ワークショップ5  -Next Endoscopy-消化器内視鏡技術開発のBreak through

演題名:食道良性疾患に対する新しい内視鏡治療法

コメント:Z-POEM, G-POEMという国内でほとんど施行されていない手技について発表させて頂きました。

新しい手技が実施し、認知され施行症例が増加し、標準治療へとなっていく過程の中で、学会発表の経験をさせて頂いたことは、まさに認知されていく過程を経験しているのだと実感することができました。

国内留学の者にもこのような発表の機会を頂き誠にありがとうございました。

 

発表者:牛久保慧 先生

★一般演題 口演7 上部 胃 粘膜下腫瘍3

演題名:上部消化管粘膜下腫瘍に対してEUS-FNBにて診断困難だった4例

コメント:103回日本内視鏡学会総会に参加させていただき、一般演題にて「上部消化管粘膜下腫瘍に対してEUS-FNBにて診断困難であった4例」の発表をさせて頂きました。発表を通して当院での粘膜下腫瘍に対するEUS-FNBの成績を解析し、今後さらに20mm未満のSMTでの有用性を検討していきたいと思いました。また、大腸ESDのハンズオンセミナーにも参加させて頂きました。同世代の内視鏡医との交流もあり、今後の診療をより一層励んでいこうと思いました。

 

 

 

<第369回消化器病学会関東支部例会参加報告> 2022.5.14-15開催

(一般演題) 

発表者:岸 優美 先生

コメント:クローン病に対して長期免疫抑制治療中に発症した髄膜炎の一例を発表いたしました。症例報告として形にすると他の文献をもとになぜそのような合併症をきたしたのか考えが深まり、これからの臨床にも活かしていきたいと考えました。また、発表後に質問を受けることで、自身とは異なる視点に気づくことができました。このような経験をさせてくださり、発表にあたってご協力いただいた年森先生、田邊先生に心より感謝申し上げます。